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2004年 08月 20日
最近少しは猛暑も和らぎ、少しは過ごしやすくなったと感じる
今日この頃。皆さんも避暑地に出かけることも多いと思う。 そんな中、この時期に典型的なトラブルというものがある。 いわば時計技師にとっての夏の風物詩。それは一体どの ようなものなのだろうか?また、その原因はなんなのだろう? 『時計の分解掃除。』と『時計の分解掃除。その2』に続き、 時計を持つ方全てに必見の内容でお届けする。 行楽シーズン真っ盛りの中、海に出かける方も多いと思う。そんな この時期、持ち込まれる時計のトラブルで非常に多いのが浸水。 時計は精密機械なので、非常に微妙な調整の元に動いている。それ だけに浸水というのは非常に深刻な状態だ。初期段階で処置すれば コストも手間もかからないのに(うちだと乾燥で525円税込)、段階に よって部品交換(数百円~)、分解掃除(5千円~)、完全オーバー ホール(香箱など全ての部品の分解掃除、部品交換など1万2千円~) など飛躍的にコストも手間もかかる。特に海水の場合は一日でサビ ついたりするので大変だ。基本的に海水の場合は手の施しようがない。 とりあえず動いていたとしても、大至急分解し、内部の状態を調べ、 乾燥させ、注油しなければならない。とにかく時間との勝負。まず 深刻な状態なのだということを念頭に置いて頂き、話を進めたい。 症状は様々である。ガラスが曇っているという程度の軽症なものから、 水滴が見えるもの、秒針が身震いして進まないもの、液晶表示が薄く なったもの、液晶が完全に息絶えたもの、文字板に錆の斑点が浮き 出ているもの、裏蓋周辺が錆付いているもの、緑青が浮き出ている もの・・・。 どちらにせよ、すぐにメンテした方が良い。たとえ動いていたとしても 余り関係なく、内部に入った水分はケースの内側に長くとどまっている ので、時間が経てば経つだけ症状は深刻化していく。自分で応急処置 をするのも危険が伴う。時計誌でドライヤーで暖めるという方法を紹介 していたりするが注意が必要だ。大抵の場合ゴムパッキンが痛んだり、 機械油が乾燥したり、急激な温度変化で歩度調整が狂ってしまったり ショートしてしまったりなどあまり良い事はない。近くに持ち込めるお店 がなく、修理までに時間がかかる場合はとりあえず進行を防ぐという 意味でする程度だろうか。万一そのような場合になったら、まず竜頭を 引いたままにして内部の空気が外に出やすくしておくことと、少し暖かい 程度の温度に留めておくことだ。決して急激に暖めたりしてはいけない。 ちなみに私たちは乾燥専門の冶工具にて最低丸一日以上かけてじっくり と乾燥させている。数日預かりと聞いてビックリされる方がおられるが、 髪の毛のようにドライヤーですぐ乾くというわけではない。内部の状況も 把握しないといけないし。内部に錆が出ていないようであれば乾燥のみ でお渡しすることもできるが、大抵の場合、間もなくトラブルが発生し、 結局分解掃除をすることが多い。文句を言われることも多いけど、説明 してるのに・・・。 もしサビが出てしまっているようならば事態は深刻だ。しばらく置いてあった 場合、一見なんともなくてもルーペで見ると細かいサビが発生していること が多く、かなり部品を入れ替えることになる。サビは一旦出てしまうとどん どん広がっていき、他の正常な部品にまで影響が及ぶので大手術に なってしまうのだ。 針が動かなかったり、液晶が薄くなっていたりするのも重症だ。機械式 の場合水滴で歯車がくっついていたり、サビが出ていたりする。電池式 だとショートしかけていることが多い。こういう場合は一切ボタン操作を してはならない。回路がショートするとIC乗せ換えになってしまう。時間 も費用も跳ね上がるうえに、マイナーなメーカーだと潰れていたり、保守 パーツがなかったりで修理不可能になってしまうこともある。後で後悔 しても遅いのだ。 浸水していなくても、ケースの裏蓋部分や竜頭部分がサビ付いていたり 腐食が進んで緑青が浮き出ているものは、浸水するまで時間の問題の 場合が多い。大抵防水機能は全くなくなってしまっている上に緑青は 体にも良くないので、部品交換しておいた方がかえって良い。水が入って しまったら分解掃除からスタートなので非常に高額になってしまう。 このような症状がなぜ出たのか理由を尋ねてみると、その原因らしき 理由も様々である。身に着けて海に入ったら水が入った、水の中に 落としてしまった、手を洗った、シャワーを浴びた、気付かず洗濯機で 洗ってしまった、汗かきだから、近くで電池交換したらこうなっていた、 水中で日付が狂っているのに気付き調整した、水中でクロノグラフを 作動させた、竜頭を操作したあと元に戻していなかった、汚れたので 水道で洗った、子供がいたずらした、トイレに落とした、防水性を確か めたかった、台風の中身に着けていた、何もしていない・・・。 防水性能が100Mであったとしても、水道で瞬間的に100Mを越える 水圧が瞬間的にかかる事はありえる。手を洗ったりシャワーを浴びる ときは極力時計をはずすこと。海水の場合は本当にあっという間に サビが来る。海水が中に入ったら、まず相当の修理費がかかることを 覚悟しないといけない。洗濯機で洗ったということは洗剤まみれになって いるということ。これはサビが出やすいのかどうなのか良く分からないが、 水分+衝撃ということで別の意味でも深刻だ。大抵はバランスがメチャ クチャになってしまい、まともに動かない。汗かきの方は、身につけた 後汗をふき取るだけで時計自体の持ちがかなり変わってくる。腐食も 少なくてすみ、パッキンの痛みも少なく、必然的に水分が入り込むこと もすくなくなる。意外なことが意外な効果をもたらす典型だ。 電池交換後というのは交換作業した人の責任が重いことが多い。電池 交換時、1.パッキンの状態によっては交換し、2.シリコングリスを塗布 し、3.裏蓋を締める。しかし、パッキンをはめ忘れたり、グリスを塗布し 忘れて防水性能が弱かったり、パッキンを噛んでしまって切れていたり、 利いていなかったりということがある。きちんと技術を持ったところで電池 交換をしないと、あとで泣きを見ることがあるのだ。また、普段チェック しない竜頭部分のパッキンが耐用年数を越えていることが多く、そのため に竜頭から水分が入り込むことが非常に多い。電池交換時に診てもらう ほうがいいだろう。 水中で操作をするというのは自殺行為。1000M防水だろうがなかろうが 水中での操作は考えられていない。これは自殺行為だ。汚れを落とす のに水道で洗うのも怖い。水道だと瞬間的に大きな水圧が掛かる可能性が ある。水中でも動けばかなりの水圧が瞬間的に掛かる。防水性の表示は あくまで均等に、ジワリと水圧が掛かったときなので油断は禁物だ。洗うの ならばきちんと竜頭がしまっているのを確かめた上で優しくふき取る程度。 通常はサービスで洗浄してくれるので、お店にお願いしたい。 子供のいたずらはしょうがないとして、トイレに落としたものは単純に触り たくない(苦笑)ので、別の理由をお話いただければ、なんら気兼ねなく メンテナンスできるので、宜しくお願いいたします。 防水性を確かめるのは、何度も説明している通り表示はあくまでソフトに 水圧が掛かった場合なのでしない方が良い。必ず後悔します。台風は 水道やシャワーと同じく水圧が掛かる場合と絶え間なく雨に打たれる場合 とあり、どちらにせよ注意が必要。日常防水や日常強化防水はあまり意味 がないので、このような場合はつけないほうが無難だ。問題は『何もしていな かった』というもの。何もしていないのに勝手に水分が入り込むはずがない。 かならず原因となる出来事があるはず。ただ、年数が経っていて分解掃除 を今までした事がなければ、パッキンが耐用年数を過ぎていて利いていない ことが多い。実際に水分が入り込む場合、その大半は竜頭部分(裏蓋は電池 交換時にメンテする可能性が高い)。これは分解掃除をしたことがあるかない か。何もしていないのに、と言う方は大抵の場合メンテナンスもしていない。 防水機能は購入後どんどん落ちていくので、数年に一度、労わりと愛情を もって分解掃除に出すのをお勧めする。 浸水と言うのは時計のトラブルの中でもかなり深刻な部類に入る。しかも、 これはきちんとメンテナンスをしていれば、操作ミスをしない限り防ぐこと が可能なトラブル。分解掃除の費用が惜しければ、せめてパッキン交換 (裏蓋だけでなく竜頭部分も)をしておかれたほうがいい。海に出かける ときはどうか御注意を・・・。 感想はこちら。mailto:danzi@excite.co.jp
by danzi
| 2004-08-20 03:34
| 時計
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